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症例集詳細
膵管閉塞の猫
症例はアメリカンショートヘア、15歳齢、避妊雌。
食欲廃絶、頻回の嘔吐を主訴に来院。
身体検査では顕著な脱水と腹部触診にて細長く硬結感のある物体が触知された。血液検査では白血球数の上昇以外、生化学でも著変を認めなかった。
第1病日はオーナーが対症療法のみ希望したため、乳酸リンゲル液の皮下点滴とエンロフロキサシン、メトクロプラミドの投与で経過観察とした。
第2病日、嘔吐は止まったが、ごく少量しか食べないとのこと。腹部超音波検査を実施したが明らかな異物およびマスは認められなかった。胆嚢内に結石が認められた。この日も対症療法を実施した。
第3病日、ミルクを飲ませたところ嘔吐してしまったとのこと。腹部単純X線検査にて腹腔内に多数の結石像が確認された。機械的イレウスの除外目的で消化管バリウム造影検査を実施したところ、通過障害は認められなかった。
しかしながら、依然として腹部触診では細長く硬結感のある物体が触知された。症状の改善も乏しかったため、オーナーの同意を得て同日試験開腹を実施した。
手術所見:
腹腔内には硬結した膵臓と思われる組織が確認され、針で穿刺すると膿汁が抜けた。
さらに十二指腸との連絡部付近に硬結部位を認め、針で探ると硬い物体に突き当たったため結石の閉塞と判断した。結石の直上を切開し結石を摘出後、切開部位から硬結した膵臓内へ栄養チューブを挿入し、生理食塩水で繰り返し洗浄したところ膿汁と小さな結石が多数回収された。
切開部位は4-0モノフィラメント合成吸収糸にて縫合、閉鎖し、腹腔内洗浄後閉腹した。
術後の腹部X線検査では十二指腸付近に存在した結石像がなくなり、硬結した膵臓内の結石も減数した。
摘出した結石の分析結果は炭酸カルシウム100%であった。膵臓内の膿汁には塗抹上細菌は認めず、培養検査でも細菌は発育しなかった。
術後は抗生物質(セファゾリンナトリウム)とNSAIDs(ロベナコキシブ)の投与、乳酸リンゲル液の静脈点滴を実施した。術後3日目に給餌を開始したところ、少量ずつだが食べる様子がみられ嘔吐は認められなかったため、第8病日に退院とした。
術後150日以上経過した現在も経過良好である。
考察:
膵石症はヒトでは慢性膵炎の最も頻度の多い合併症の1つであり、主膵管や分岐膵管に炭酸カルシウムを主成分とする結石が生じるとされている。一方、動物においても慢性膵炎の経過中に膵管内に結石が形成されることがあるとされているがまれである。本症例の結石成分も100%炭酸カルシウムであり、総胆管との合流部より膵臓側に結石が存在していたため、本症例は膵石による膵管閉塞と考えられ、また結果的に慢性膵炎に罹患していたことが予想される。
本症例は開腹前のX線検査で結石陰影が多数認められたが、膵石症がまれな病態であったため事前の診断が困難で、試験開腹にて原因特定に至った。今回のような症例は珍しいと思われるが、本症例での経験を通じて今後膵臓を思わせる位置に結石陰影が認められる場合は慢性膵炎の存在を疑い、さらに主膵管十二指腸開口部付近に結石陰影を認める場合は、膵石自体に関連した症状の可能性も考慮するべきと思われた。
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