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病気の話詳細
急性膵炎について
昨日まで元気にしていたのに今朝から食べず、突然苦しそうに何回も吐いて元気がなくなった…。もしかするとそれは急性膵炎かもしれませんよ。急性膵炎は消化器系の疾患の中でも重症な病気であり、また比較的多く認められます。今回は急性膵炎についてお話ししましょう。
病態
急性膵炎は、消化酵素の前駆物質として膵臓内に保管されている膵液がさまざまな原因により活性化され、膵組織の自己消化と炎症反応が生じることにより発症します。膵液は主膵管により十二指腸に分泌されていますが、同じ部位に総胆管が連絡しており(図1)、膵臓の炎症が総胆管に波及すると胆汁がうっ滞して黄疸を呈するようになります。また、膵炎は各種酵素も活性化させ、周囲組織の炎症や壊死から生じた炎症性サイトカインが血液やリンパ液中に流入してしまうと全身性炎症性反応症候群(SIRS)や急性腎不全、播種性血管内凝固(DIC)などの重篤な併発症が引き起こされてしまうと死亡率も高くなります。
臨床症状
急性の食欲廃絶・嘔吐を主訴とする。
回数の多くない泥状下痢便や血便を伴うことが多い。
腹痛のため体を丸めたり、伏せの状態でお尻だけ上げる姿勢(祈りのポーズ) を取る。
重症例では黄疸、消化管出血、発熱なども見られ、重篤な場合は多臓器不全に陥り死に至ることもある。
要因
高脂肪食や無分別な食事
肥満・高脂血症
副腎皮質機能亢進症・糖尿病・甲状腺機能低下症などの疾患
炎症性腸疾患(IBD)
胆嚢・胆管疾患
高カルシウム血症
外傷・手術・薬物投与など
検査法
検便:細菌・寄生虫疾患の除外
血液検査
WBC・CRP↑:炎症の存在
AMYL・LIP↑:急性膵炎の指標
RBC・PCV・Hb↑:脱水の程度
GPT・ALP・T-Bil・GGT↑:胆汁うっ滞の指標
Tcho・TG↑:高脂血症の指標
BUN・Cre・IP↑:急性腎不全の指標
PLT↓・PCV↓・FDP↑:DICの指標
血液特殊検査(外注検査)
膵特異的リパーゼ(PLI)・トリプシン様反応物質(TLI)↑:急性膵炎の診断
腹部超音波検査
治療
急性膵炎では重症化を防ぐために早期の治療を開始することが原則で、膵炎の可能性が強く疑われるなら外注検査の確定診断を待たずに入院治療を行うことが勧められます。
残念ながら急性膵炎には特効薬がありません。
治療の基本は膵臓の安静化と積極的な内科的支持療法であり、初期治療としては、輸液による循環血液量の確保、制吐剤・制酸剤による嘔吐の抑制、鎮痛剤による腹痛の緩和が行われます。初期には膵臓の酵素を刺激しないように3日間程度は絶食・絶水が必要で、嘔吐が治まってきたら水分から投与を開始し、徐々に低脂肪食を与えていきます。
予後
急性膵炎は軽症に限り予後は良好ですが、症状が重度になると膵臓だけでなく各臓器に合併症や全身的な併発症が生じるため、それらの治療を同時進行的に行わなければならなくなり予後不良となることも多い疾患です。急性膵炎の治療には外科的治療や特効薬がないため対症療法と自然治癒に任せるほかなく、根本的な治療というわけにはいかないため治ったように見えてもダメージを受けた膵臓が元通りになることはないのです。そのため、治療後も徹底的な食事管理が必要で、特に高脂肪食は与えてはなりません。
急性膵炎は犬では決して珍しい病気ではなく、日頃の食習慣や慢性小腸疾患、胆嚢疾患などが引き金となって発症することの多い病気です。嘔吐や下痢などを主訴にした犬を無作為に検査したところ16%が膵炎であったという報告もあります。ですから当院では嘔吐・下痢を主訴に来院された場合、最も注意すべき疾患として、費用の無駄になるかもしれませんがアミラーゼやリパーゼの検査を実施することにしています。急性膵炎にならないように、高脂肪食を与えたりせず、肥満にさせないように食事管理をしっかりと行っていってくださいね。
こうべどうぶつクリニック
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