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病気の話詳細
脾臓の病気について
おなかの中にはいろいろな臓器がありますが、意外と知られていないのが脾臓です。どなたでも急に走った時にわき腹が痛くなったりした経験があると思いますが、あれは脾臓の収縮によるものです。普段は痛くもかゆくもない臓器ですから、健康診断などでいきなり脾臓の異常を指摘されてびっくり!ということが多いと思います。今回は脾臓の病気についてお話ししましょう。
脾臓の役割
脾臓は血管系の臓器であり、胃の尾側に位置する細長い舌のような形をしています。
1 免疫系の調節:免疫系として体の中で最大の臓器であり、多数のリンパ組織があり病原体の処理や抗体を産生して免疫力を高めたりしています。
2 血液の再処理工場:古くなった血液細胞や病気で変形した赤血球などを破壊して、その中から新しい細胞の材料を取り出す重要な役割をしています。肝臓にも同様の役割があります。
3 血液の貯蔵庫:体の中を循環する血液の30%までを貯蔵することができ、急な出血などの場合は貯蔵した血液を放出して循環血液量を調節します。
4 髄外造血:血液を作り出すのは主に骨髄ですが脾臓にも造血組織があり、白血病などで骨髄がうまく血液を作れなくなった時などに造血を行うことがあります。
脾臓の異常
脾臓の異常は、全体に腫れている状態(脾腫)と一部が限局的に腫れている状態に分かれます。
1 非腫瘍性疾患
全体的に腫れている場合:感染・炎症・うっ血・捻転・髄外造血など
限局性に腫れている場合:結節性過形成・血腫・出血性梗塞・膿瘍など
2 腫瘍性疾患
2/3ルール:脾臓に何らかのしこりがある場合、その2/3は腫瘍性病変で、さらにその2/3は悪性腫瘍である。そして悪性腫瘍ではその多くが血管肉腫である
脾臓の腫瘍では脾臓原発性と多中心性(全身性)のものがあります。
脾臓原発腫瘍:血管肉腫・血管腫・線維肉腫・平滑筋腫・未分化肉腫など
多中心型腫瘍:リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫・形質細胞腫・肥満細胞腫・悪性組織球症・悪性黒色腫など
猫では肥満細胞腫とリンパ腫が多い。
診断
血管肉腫に限らず超音波検査などで脾臓にしこりが発見された場合、針生検では腹腔内出血を起こす危険性があるため、確定診断は脾臓を摘出した後の病理検査で行うしかありません。手術の時の肉眼的な所見でも非腫瘍性病変である血腫や良性腫瘍の血管腫、あるいは悪性腫瘍のリンパ腫などと区別することもできません(図1)。可能であればCT撮影で他の臓器にしこりがないか(リンパ腫や悪性組織球症などの鑑別)を確認した方がいいかもしれませんが麻酔のリスクもあります。
どれが悪性腫瘍かわかりますか?
左上:未分化肉腫(悪性腫瘍) 右上:血管肉腫(悪性腫瘍) 中央左:リンパ腫(悪性腫瘍) 中央右:髄外造血(非腫瘍性) 下:血腫(非腫瘍性)
治療
腹腔内出血を生じている場合は出血性ショックに対する治療を行い、DICを疑う場合にはそれも同時に治療します。輸血が必要となる場合もあります。
出血がコントロールされた場合や無症状の場合は脾臓の摘出を行いますが、ほとんどの場合すでに転移しており、手術を行っても残念ながら平均余命は3~6か月とされています。
術後の抗癌剤治療により倍程度まで余命を延長できる可能性もありますが、完治することはまずありません。ですがたとえ無症状であれ、脾臓にしこりを持っているということはそれが血腫であっても血管肉腫であってもいつ爆発するかわからない爆弾を腹に抱えているようなものです。血腫であれば摘出により完治しますし、リンパ腫や肥満細胞腫ならばかなりの延命が望めます。
血管肉腫について
血管肉腫は脾臓の腫瘍の中で最も多く、血管内皮細胞由来の悪性腫瘍です。脾臓以外では心臓(右心房)や肝臓、皮下組織に発生します。悪性度が高く、血行性転移が早期に起こるため発見された時にはすでに転移しているものと考えられます。1~2㎝の小さなしこりでも容易に出血し、腹腔内に大量出血して初めて発見されることも多く、その他の場合は健康診断などの際に超音波検査で偶然発見されることもあります。また血管内皮系腫瘍として血液凝固亢進が高率に発生し、末期になると体の中のあちこちで血栓を作るため血栓症としての症状を生じたり、凝固亢進により血小板が消費し尽くされて逆に出血が止まらなくなったり(DIC)することもあります。
脾臓の異常は腹部超音波検査が最も有効な検査方法です。また確定診断は困難ではありますが入念な血液検査などで暫定診断が可能となることも多いです。血管肉腫はこわいですが、理由のわからない突然死を迎える前に愛犬との時間を作ることもできます。十分な知識を持って一緒に戦っていきましょうね。
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