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アトピー性皮膚炎について(2006.4月号)

2007.09.01

今回は今頃の時期から症状が悪化してくる皮膚炎の一つで難治性でもあるアトピー性皮膚炎についてお話したいと思います。

かゆい!なんとかして~
 皮膚炎というと何でもかゆいものと考えがちですが、かゆい皮膚病はノミアレルギー、寄生虫疾患(疥癬・アカラス・ツメダニ・シラミ等)、食物アレルギー、細菌性皮膚炎(多くがブドウ球菌)、真菌性皮膚炎(特にマラセチア)、その他少数くらいのものです。ですから診断としては除外診断からのスタートになります。年齢(1~3歳で発病)、犬種(柴犬、シーズー、G・レトリバーなど)、家族歴などを考慮し、病変の分布と症状からアトピーを疑う場合でも、まずは除外診断として詳細な皮膚検査(掻爬テスト・毛根検査→寄生虫疾患を除外、スタンプ検査→細菌性皮膚炎・マラセチア皮膚炎を除外)を行います。そのあと食物アレルギーを除外するために低アレルギー食による短期除去食試験(4~8週間)を行います。食事のコントロールによっても症状の改善が見られない場合に初めてアトピー性皮膚炎を疑い、その確定診断のためにアレルギー検査(血清検査)を行って、陽性反応が出た場合に診断が確定します。

アトピー性皮膚炎はどうして起こるの?
 ヒトのアトピー性皮膚炎の病態としては、アレルギー反応を主体とする免疫学的異常が重要な役割を果たしていると考えられていますが、犬の場合ではその免疫病態に対する明確な情報は未だ明らかになっていません。ただ、アトピー性皮膚炎の発症には複数の要因(免疫機構の異常、皮膚バリア機構の異常、生活環境など)が関与することが示唆されており、それらのさまざまなバランスが崩れることにより、環境抗原に対してIgEという抗体が過剰に産生されることで発症します。発症機序としては「抗原の暴露→IgE産生→肥満細胞の脱顆粒→炎症性物質の放出→局所の炎症発現」という流れになります。それぞれの段階に対して抗原の回避、減感作、抗ヒスタミン剤、ステロイド・シクロスポリンのような免疫抑制剤などの治療を行っていくことになります。

アトピー性皮膚炎の免疫学的側面
 ヒトも犬も「昔に比べて最近アトピーが増えたなぁ」という感想は誰もが思うところだと思います。よく言われるのが環境の悪化やドッグフードの普及などですが、最近になり免疫学的な側面(サイトカインバランス)からの考察がなされるようになりました。
例えば昔の人間はおなかの中に寄生虫がいたり、不衛生な環境に住んでいるためにその結果として細菌や寄生虫に対する免疫(細胞性免疫)が、ウイルスや環境抗原に対する免疫(液性免疫)より優位な状態であったため、アトピー体質になりにくかったのではないかという説があります。生まれたばかりの子供はウイルスから身を守るために液性免疫が優位な状態にありますが、成長するにつれいろいろな病原体と接触するたびに細胞性免疫が優位な状態に変化してきます。しかし最近では、犬を飼う環境が室内に移行するにつれ、病原体から隔離され清浄な環境で生活しているために細胞性免疫が活性化されなくなり、液性免疫が優位な体質から変化せず、アトピー体質から抜け出せなくなってきているということが言われています。そのため、最近になり免疫のバランスを調節してアトピー性皮膚炎からの脱却を図る新しい治療薬であるインターフェロンγ製剤が発売されました。70~80%のアトピー性皮膚炎に効果があるといわれています。

治療はあらゆる角度から
アトピー性皮膚炎を治療するためにはどれか一つではなく、あらゆる面での対処が必要です。食事、シャンプー、環境、投薬など飼い主さんの苦労も絶えません。その子に合った治療を我々スタッフとともに探していきましょうね。

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